本記事の制度・公式情報の確認日:2026年10月27日。税務上の取扱いは、対象の事業年度・取引内容・届出状況等により異なります。
「法人の記帳を社長が続けるか、税理士に任せるか」で迷うとき、記帳代行の月額料金だけを比べても結論は出ません。自社記帳には入力と照合の時間が必要で、記帳代行を使っても請求書・領収書の整理や取引内容の説明は残るからです。
この記事では、月間仕訳数・自社で使う時間・外注後にも残る作業の3つを軸に、法人の自社記帳と記帳代行を比較します。鷲見公認会計士税理士事務所の公表料金を使った計算例も示しますが、金額は当事務所のサービス条件に基づくものであり、市場全体の相場ではありません。
記帳方法の比較条件
記帳は、会社の売上・仕入・経費・入出金などを会計帳簿に記録する業務です。法人は取引を帳簿に記録し、帳簿と関連書類を保存する必要があります。国税庁は法人税関係の帳簿の例として仕訳帳、総勘定元帳、売掛金元帳、固定資産台帳などを挙げています。
自社記帳では、社長や経理担当者が会計ソフトに仕訳を登録します。一方、記帳代行では、税理士事務所などが、契約に含まれる取引について提供された資料をもとに入力を担当します。ただし、どちらの方法でも取引の事実を把握している会社側の協力は必要です。
| 作業内容 | 自社記帳 | 記帳代行 |
|---|---|---|
| 請求書・領収書の収集 | 自社 | 原則自社 |
| 支出の用途、取引先などの説明 | 自社 | 自社から依頼先へ説明 |
| 会計ソフトへの仕訳入力 | 自社 | 契約範囲に応じて依頼先 |
| 通帳・カード明細の確認 | 自社 | 共有・照合の範囲を契約で決める |
| 不明取引への回答 | 自社内で確認 | 依頼先からの照会に回答 |
| 決算書・税務申告書の作成 | 別途自社または税理士 | 別途契約範囲を確認 |
記帳代行を契約しても、決算申告や給与計算まで当然に含まれるわけではありません。反対に、税務顧問と決算申告を含むプランに、記帳代行だけを追加する構成もあります。費用を比較するときは、同じ業務範囲同士を比べることが前提です。
仕訳数と取引の複雑さ
記帳代行の料金を検討する際に使われる「仕訳数」は、領収書の枚数や銀行明細の行数と、常に同じとは限りません。会計ソフトの登録方法によって仕訳の数え方が異なる場合もあるため、契約時に件数の定義を確認しましょう。
少数の仕訳に手間がかかる例
たとえば月30仕訳程度の法人でも、次の取引が混在していれば、単純に30件を登録するだけでは終わりません。
- 売上の請求日・入金日が別で、未決済管理が必要
- 社長の個人カードによる立替払いがある
- 消費税の税区分やインボイス関係の確認が必要
- 借入金の元本返済と利息を分ける必要がある
- 複数月分をまとめた請求書や前払い費用がある
一方、月100仕訳を超えていても、取引内容が定型化され、連携・照合の手順が整理されている法人では、自社記帳の時間がそれほど増えない場合もあります。
したがって、「月50仕訳を超えたら必ず外注」などの一律基準は設けられません。 仕訳数は料金を見積もるための重要な情報ですが、向き不向きは入力の難しさや社内の対応時間と合わせて判断します。
仕訳50件・100件で年間費用はいくら違う?
以下は鷲見公認会計士税理士事務所が公開している料金を使った例です。年商500万円以下、一般的な税務顧問・法人決算申告を依頼する法人を仮定します。会計ソフト利用料・消費税申告料・特殊な税務処理などの追加費用は含めません。
ケース1:月50仕訳以内の場合
| 条件 | PLAN 01:自社記帳 | PLAN 02:記帳代行あり |
|---|---|---|
| 月額・税抜 | 20,500円 | 25,500円 |
| 12か月利用時の参考費用・税抜 | 246,000円 | 306,000円 |
| 12か月利用時の差額 | — | +60,000円 |
| 記帳の担当 | 自社 | 当事務所(月50仕訳以内) |
| 法人決算・税務申告 | 含む | 含む |
この条件での差額は、月額で5,000円、年間で60,000円です。比較の対象は記帳業務を任せることによる追加費用であり、税務顧問・決算申告の有無による差ではありません。
ケース2:月100仕訳の場合
同じ年商条件でPLAN 02の記帳件数を100仕訳まで拡張する場合、当事務所の公表料金では月4,000円の追加料金です。
| 条件 | 自社記帳 PLAN 01 | 記帳代行 PLAN 02+件数拡張 |
|---|---|---|
| 月額・税抜 | 20,500円 | 29,500円 |
| 12か月利用時の参考費用・税抜 | 246,000円 | 354,000円 |
| 12か月利用時の差額 | — | +108,000円 |
※あくまで月100仕訳以内の件数拡張が適用できる通常条件で、年間を通じて同じ月額料金とした試算です。実際には月ごとの件数、資料の状態、他の追加業務などを確認して料金が決まります。
このように、仕訳数が増えるほど追加費用も変わる場合があります。見積もり前に「平均件数」と「繁忙月の最大件数」を分けて把握しておくと判断しやすくなります。
当事務所は最低契約期間を設けない月額料金制です。12か月費用は同じ条件で12か月利用した場合の参考額で、利用期間を義務付けるものではありません。残期間分の料金や解約違約金はありません。ただし、初回決算までの契約期間が6か月未満の場合に限り、決算申告込みの報酬を個別に精算します。金額・条件は契約前にご案内します。費用には年2回・各30分のオンライン面談、税務顧問と法人決算申告が含まれます。料金の詳細やオプションの条件は公式ページでご確認ください。
合わせて読みたい:法人の税理士費用・料金シミュレーター
記帳時間を費用に換算
外注のメリットを判断するには、現在の記帳に何時間かかっていて、そのうち実際に何時間減りそうかを確認します。自社記帳の時間すべてが外注によって消えるわけではありません。
たとえば、次のような法人を仮定します。
- 現在の自社記帳:月6時間
- 記帳代行後の資料整理・照会対応:月2時間
- 想定される時間の減少:月4時間
- 記帳代行の追加費用:月5,000円(ケース1の条件)
この場合、追加費用を時間の減少で割ると、5,000円 ÷ 4時間 = 1時間当たり1,250円です。これは「減らせると仮定した1時間に、いくら追加費用をかけるか」を表す比較用の指標です。外注で時給1,250円の利益が必ず生じるという意味ではありません。
もし同じ会社で、資料整理や問い合わせ対応に月5時間かかるなら、減少する時間は月1時間にとどまり、1時間当たりの追加費用は5,000円になります。資料が整理されていないと、外注しても社内負担が思ったほど減らないことがあります。
同じ仕訳数で結論が違う例
次の2社は、どちらも月50仕訳以内で、記帳代行の年間追加費用を60,000円と仮定します。取引内容、担当者の時間、資料準備の状況は異なります。
| 比較項目 | A社(仮定) | B社(仮定) |
|---|---|---|
| 現状の自社記帳 | 月8時間 | 月2時間 |
| 外注後に残る作業 | 月2時間 | 月1.5時間 |
| 減る時間 | 月6時間 | 月0.5時間 |
| 年間の減少時間 | 72時間 | 6時間 |
| 減少1時間当たりの追加費用 | 約833円 | 10,000円 |
A社は本業に戻せる時間が比較的大きい一方、B社は入力作業が少ないため、費用面だけなら自社記帳を続ける選択肢があります。表は時間を仮定した比較であり、外注による利益の増加を保証するものではありません。
入力と調査の時間を分ける
記帳作業を1か月計測するなら、①取引登録、②請求書・領収書の収集、③用途の調査、④預金残高の照合、⑤税務上の疑問の確認に分けます。入力時間が長ければ記帳代行が候補になります。反対に、どの取引が経費になるかの判断で手が止まるなら、記帳代行だけでなく税務相談・確認体制が必要かもしれません。
記帳方法の適性を比較
| 判断材料 | 自社記帳を続けやすい状態 | 記帳代行を検討したい状態 |
|---|---|---|
| 入力担当 | 社長・担当者が継続して登録できる | 入力担当がいない、繁忙期に止まる |
| 取引内容 | 定型的で説明できる | 現金・立替・未決済の整理に手間がかかる |
| 帳簿の状態 | 毎月照合できている | 未入力・残高不一致が続いている |
| 業務時間 | 負担が小さく、営業に影響しない | 本業の時間を圧迫している |
| 資料の状態 | 自社で整理・保存できている | 入力以前の整理方法を見直す必要がある |
表の右側に当てはまっても、必ず外注が最適というわけではありません。まず会計ソフトの連携設定や資料の集め方を見直した方がよい場合もあります。また、税務上の判断が複雑な法人では、入力を外注するだけでは解決しないことがあります。
外注後も自社に残る責任
取引を説明すること。 何を購入したのか、売上がどの契約に対応するかは、通常、会社側で情報を持っています。用途が不明な支出は外注先から確認されることがあります。
証憑を管理すること。 国税庁が求める帳簿書類の保存義務は、記帳代行に依頼したという理由で会社からなくなるわけではありません。電子取引データには電子帳簿保存法上の取扱いがあるため、保存方法も確認します。
申告・納税状況を把握すること。 決算申告の作成や提出を税理士へ依頼したとしても、自社がどの税金をいつ納付するか確認する必要があります。記帳代行の料金に申告業務が含まれるかも契約で明確にしましょう。
記帳方法を切り替える前のチェックリスト
- ☐ 現在の月間仕訳数と、件数が多い月を確認した
- ☐ 入力にかけている時間を1か月計測した
- ☐ 資料整理・用途確認の時間を分けて記録した
- ☐ 現預金残高・売掛金等に未照合がないか確認した
- ☐ 記帳代行の料金に含まれる仕訳数を確認した
- ☐ 記帳代行に決算申告が含まれるか確認した
- ☐ 会計ソフト利用料・消費税申告料などを含めて比較した
- ☐ 契約期間・途中変更の条件を確認した
よくある質問
Q1. 月10仕訳ほどの法人でも記帳代行を依頼できますか?
依頼できるかどうかは事務所の提供条件によります。件数が少なくても社長が記帳に時間を割けない場合は検討する価値があります。ただし、会社側の資料整理や不明点への回答は残るため、外注後に減る時間を見積もってください。
Q2. 月50仕訳を少し超えたら、必ず高額になりますか?
料金体系によって異なります。当事務所のPLAN 02・03では月50仕訳以内の記帳代行を含み、51仕訳以上は件数拡張の追加料金を設けています。具体的な月間件数と取引内容によって見積もりを確認してください。
Q3. 記帳代行を依頼すれば領収書の整理は不要ですか?
不要になるとは限りません。何の支出か分からない領収書や、会社負担か個人負担か判断できない取引は、依頼先に情報を渡す必要があります。どの形式で資料を提出するか、何を自社で整理するかを契約前に確認しましょう。
まとめ|費用と作業の分担を比較する
自社記帳と記帳代行を選ぶ際は、月間仕訳数、入力にかかる時間、外注後に残る資料整理・照会対応、決算申告まで含めた契約範囲を比較しましょう。件数だけで向き不向きが決まるわけではありません。
鷲見公認会計士税理士事務所では、法人の税務顧問・決算申告を基本に、自社記帳と記帳代行から業務範囲を選べます。まずは現在の仕訳数と依頼したい範囲を整理し、サービス内容と料金をご確認ください。
合わせて読みたい:税務顧問・記帳代行・決算申告のサービス
出典・参考資料
- 国税庁「帳簿書類等の保存期間」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
- 国税庁「帳簿の記載事項と保存」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6621.htm
- 鷲見公認会計士税理士事務所「料金」 https://sumicpa.jp/price/
- 鷲見公認会計士税理士事務所「税務顧問・決算申告」 https://sumicpa.jp/services/
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm